決算書の暗号を解け

決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール

決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール

勝間本を実際に読んでみた。この本は会計操作を扱ったもの。かなり実際的でありながら初心者にも読みこなせる、良書と言えそう。教科書的な会計しか知らないものから見ると、面白かった。

  • B/Sの資産の部の固定資産は、「資産」というよりも、「これから費用化される項目の覚え書き」にすぎない。「過去に払った資産総額のうち、まだ費用として計上していないもの」。繰延資産も同様。固定資産は土地を除いて、いつかすべてを費用化しなかればならない資産である。
  • 利益の絶対額が増えていたとしても、ROAが継続して下がっていたら注意。都合の悪いものを、どんどの「資産の部」に溜め込んで利益を膨らませているだけかもしれない。
  • P/Lをみるとき、(1)C/Fと見比べて現金の裏づけがあるかを確認し、(2)B/Sと見比べROAが下がっていないかチェックすること。
  • 費用をなるべく先送りする戦略の一つ:「人件費を資産計上して先送りする」 実際には人件費は販管費なので、当期の販管費としてP/Lに計上するべきだが、B/Sの資産の部に溜め込むこともできる。具体的には、無形固定資産の「ソフトウェア」「建設仮勘定」「ソフトウェア仮勘定」「研究開発費」という形で資産化されることがよくある。
  • 資産をふくらませる戦略の一つ:「含み益のある資産を売却する」これは当然だけど、以下の様な実例が興味深い。「含み益のある土地建物をリースバックするというもの。土地建物あわせて簿価5億円の本社があったとして、時価ベースで100億円だとする。このとき、土地建物をリース会社に売却してそれをリースする形にすると、なんと突然、資産が時価で再評価される。その結果、資産が大きくなり、差額の95億円が一気に利益として計上できる。」
  • 負債を計上しない戦略の一つ:引当金を取り崩す(これは、積み立てていた貯金を取り崩すようなものであり、危険なはず。)
  • 決算短信の見方「新しい事業モデルの構築に向け…」は、「既存事業が行き詰っているんだな」と読み替える(こともできる)。
  • 固定資産の償却方法
    • 建物は定額法のみ(税法上定率法が認められていない)
    • それ以外は、定額法と定率法どちらでも可だが、普通は定率法(より早く費用化できて節税効果が高いため)
    • ただし、減価償却費を一気に計上して利益を減らしたくない(儲かっていない)会社はすべて定額法をつかって、少しずつ時間をかけて償却する。
    • 償却方法が定額法-> 定率法:「余程儲かっているのだな」定率法->定額法:「何からの原因で困ってきたのではないか」
  • 「のれん」の償却
    • 資産の部にある: 純資産を上回る額で買収した(将来費用計上される)
    • 負債の部にある:純資産を下回る額で買収した(将来の利益になる)
    • 期間は2-20年で償却すればよい(幅がある)
    • 米国会計基準国際会計基準では、のれん代は定期償却でなく、減損テストによる方法。
  • 繰延資産とは、「費用を繰り延べた試算」であり、繰延資産の額が大きければ大きいほど、費用を先送りしているということ。
  • 社債は、通常の借入金とちがって、無担保且つ公的な市場で発行されるため、社債を発行している会社には細かい規定がかされる(赤字になってはいけない、流動比率はX%以上でなければいけない、等会社毎に異なる)。よって社債発行は会計操作のインセンティブになる。
  • 法人税率は税引前当期純利益の40%のはずだが異なる場合は。。
    • 税務署が利益と認めないような内容を会計利益としてP/Lで報告しているということ。怪しい。
  • 会計操作をしているということは、内部統制に問題があるか、外部環境が厳しくなり「利益」を捻出せざるをえなくなったか、ということを意味する。